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“再生系”サービサーへの高まる期待。
当社グループの総合力、ネットワークを駆使して、全力で応えてまいります。
当期は、本格的にポストコロナ時代に突入したこともあり企業業績は概ね堅調に推移し、日経平均株価も急落する場面があったものの、史上最高値を更新するなど全般的に高水準を維持してきました。一方で、物価や人件費の高騰により、中小企業を中心として厳しい経営環境が続いています。政府・日銀はマイナス金利を終了させるとともに、物価高や円安への対応、構造的な賃上げ推進に取組んでいるものの、地政学的リスクの増大や欧米における政治情勢の不安定化、そして我が国においても総選挙で与党が大敗するなど、先行きの不透明感は一層濃くなっています。
また、当社グループのビジネスフィールドにおいては、コロナ禍関連の中小企業支援が最終段階を迎え、それまでの延命から事業再生・再チャレンジ、事業承継、創業支援等に軸足が移っています。そうした中で、事業承継等の手段のひとつであるM&Aにおいて、悪質な事案が社会問題化するなど、新たな課題も出てきています。
このような環境下、当社グループは、「顧客第一主義」の企業理念に則り、「不動産・債権に関するワンストップサービスの提供」をビジネスモデルに、グループ総合力及び協業先とのネットワークという強みを活かして、業務に取り組んでまいりました。
サービサー事業は、前期から持越した大型案件を処理したものの当期見込んでいた大型の回収がずれ込んだこともあり、前期比で売上、利益ともほぼ横ばいとなりました。
派遣事業は、概ね計画通りに推移したものの、派遣先での案件の期ずれが発生したことが影響し、前期比で減収、減益となりました。
不動産ソリューション事業は、大型案件の進捗遅れが影響し、計画を下回る結果になりました。
これらの結果、当期における当社グループの連結業績は、売上高2,290百万円(前期比7.8%減)、営業利益36百万円(同56.6%減)、経常利益106百万円(同35.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益49百万円(同58.7%減)となりました。
コロナ禍を背景にいわゆるゼロゼロ融資など、中小・零細企業に対する支援策が進められました。しかし、ポストコロナ時代を見据えて、こうした支援融資の先行き懸念から、2022年3月、国から「中小企業活性化パッケージ」が発表されました。これは、コロナ資金繰り支援の継続とともに、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促そうというものです。その後も関連するガイドラインやレポート、支援策などが発出されました。当期においても
・「再生支援の総合的対策」(2024年3月)
・「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底について」(同6月)
・「事業者支援の徹底に向けた『再生系サービサー』との連携等について」(同7月)
・「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」(同9月)
と、立て続けに打ち出されています。
こうした国の対策において重要なのが「再生」です。そして、中小・零細企業の再生に大きく寄与できるのが、当社を含むサービサーです。サービサーの中には単に回収のみに軸足を置くものもありますが、当社のように再生目線で取組むサービサーへの期待が高まっています。
当社は、中小企業庁が推進する「再生系サービサートライアル」を通じて全国47都道府県すべての中小企業活性化協議会にエントリーし、具体的な協議、取組みを開始しています。
M&Aのトラブル事案は以前からありましたが、当期はメディアの報道などでも盛んに取り上げられたことで、社会問題となりました。買収した企業の資産を引き出したまま放置したり、買収条件である売手側経営者の個人保証の解除や退職慰労金等の支払いが反故にされたりといったことが起きています。
本来M&Aは売手側、買手側、さらに仲介業者すべてがWin-Winとなるのが目的です。後継者不足が特に深刻化している中小・零細企業にとってM&Aは、事業継続のための重要な選択肢のひとつです。また、当社グループにとっても必須のフレームワークと考えています。
国も対応を積極化しており、不適切な買手の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A仲介業者による過剰な営業・広告などに対処するため、2024年8月に「中小M&Aガイドライン」を改訂しました。
当社グループでも、関係各所から悪質M&A排除に向けた支援要請を受けています。そこで、山田グループの一員である山田エスクロー信託では、一般社団法人M&A支援機関協会に協賛会員として加盟し、協会と連携して信託の仕組みを活用した安全なM&A代金決済を提案していくことにしました。M&Aにおいて信託機能を活用すれば、当事者間の約束事項が守られることを担保できます。例えば、山田エスクロー信託が売買代金等を信託財産として預かり、約束事項が守られたことを確認して資金を交付することで被害を防ぐことができます。信託は取引の健全化に貢献できるはずです。また、財務状況が悪化している企業については、サービサーの機能を活用して債務の圧縮等を行い、きれいな形でM&Aを成立させることも可能です。
今後は事業承継を考えている中小・零細企業に向けて、山田グループの機能をアピールできるようなチャネルづくり、チャネル拡大をより積極的に図っていきたいと考えています。
サービサー事業については、サービサーが注目されている今が大きなチャンスと捉えています。前述の通り既に、「再生系サービサートライアル」を契機に全国の中小企業活性化協議会との連携を強化しています。また、金融機関はサービサーの活用を積極的に探っており、当社も主要取引銀行を中心に連携を深化させ、案件相談の増加にもつながっています。
また、債権の買取については、従来の保守的な債権評価を維持しながらも、当期末における買取債権残高は4,967百万円と順調に積み上がっています。経済状況など市場の動向などを十分考慮する必要もあり、収益化までに時間がかかる案件もありますが、着実に取組んでまいります。
派遣事業については、主要派遣先である山田グループ各社の業容拡大が期待できる状況です。司法書士法人では、期ずれしている案件の取り込みと不動産開発・分譲、住宅ローン、大口投融資案件などの受注増加が見込まれます。
山田エスクロー信託では、相続業務では全国84の金融機関等と業務提携していますが、新たな動きとしてメガバンクや大手信託銀行からの顧客層、エリアを限定した協業の要請について検討を進めています。信託業務では前出の悪質なM&Aへの対応策として信託機能の活用が有用です。既にM&A支援機関協会や大手M&A仲介業者と具体的な協議を開始しています。M&Aは中小企業の事業承継、事業再編等で重要な役割を果たしており、安全な取引環境を整えることは喫緊の課題です。M&A調査会社によると国内のM&A件数は2018年以降年間約4,000件で推移しており、非公表の案件も含めると年間1万~2万件規模と想定されています。信託会社にとっても有望な市場と言えます。
このように、山田グループの派遣需要は拡大が見込まれます。
不動産ソリューション事業については、山田グループの強み、顧客基盤を活用できる分野である底地ビジネスに引き続き注力しています。現在、東京都内に比較的大きな案件を2つ仕入れており、来期の収益化に期待しています。他にも相続業務等を通じて継続的に底地情報が入手できています。
サービサーや不動産ソリューションなど当社グループが展開する事業の多くは、個人や企業を支え、サステナブルな社会を実現するためのお手伝いをしています。
また、学生スポーツの支援を通じた次世代人材の育成や、私個人から始まり山田グループの取組みへと深化したお米づくり支援も継続しています。
さらに、2027年3月から9月にかけて、横浜市にて「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」が開催されます。世界では各所で気候変動や異常気象、生物多様性の喪失といった課題が生じています。この博覧会は、市民や企業、行政がこれらの課題に正面から取組み、人と自然が共生しながら豊かな風景を創り出す、未来の姿を発信する絶好の機会となります。当社はこの博覧会の趣旨に賛同し、寄付を行いました。当社は地元横浜の企業グループである山田グループの一員として、同博覧会の成功に向けて、今後様々な機会を通じて機運を高めていきたいと思っています。
また、横浜市は独自の取組みとして「横浜市SDGs認証制度“Y-SDGs”」を設けています。これはSDGsの3分野に地域貢献を加えた4分野で企業の取組みを評価し、認証する制度です。
山田グループはY-SDGsに積極的に取組んでおり、当社は2022年11月に標準認証を取得しました。
「再生系サービサー」は、かつてないほど社会から求められています。当社は、サービサー事業に参入してから、一貫して再生目線で業務を遂行してまいりました。そして、今、そうした当社の姿勢を世間にアピールする必要性を強く感じています。
一例としてこれからの時代に求められる「再生系」の文言を入れた新しい商号への変更を予定しています。
株主の皆様におかれましては、当社グループの経営方針並びに取組みにご理解をいただき、引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
2025年1月17日 本社にて